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2015年6月 2日 (火)

やぶれかぶれの一葉の交渉術

『樋口一葉 日記・書簡集』。

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 文語体なので読みにくいのですが、なかなか美しい文章だし、和歌のたしなみもあり、さすが才女です。

でも面白いのがその内容。

明治27年2月頃に、天啓顕真術会本部の久佐賀義孝氏を鐙坂の上の真砂町に訪ねます。

何だ、このあたり歩いたことがありました。

こちらの写真は、鎧坂を上から見た所。手前の家には金田一京助氏が住んでいたそうだ。

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 ここにはこんな古い家もあり、多分この裏手あたりに昔の一葉の菊坂の家があったものと思われます。

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 さて、話を一葉に戻しましょう。

この頃、一葉は菊坂から下谷龍泉寺町に引越し、吉原近くで荒物・駄菓子屋をやっていましたが、なかなか生活が苦しかったのです。

 久佐賀氏は占いや相場をやっていたようですが、一葉はこんなことを頼み込むのです。

「女の身でありながら、こんな風に押しかけて来て申し訳ありませんが、これには理由があるのです。天地を治められているほどの広いお心で、どうか私の愚言、卑言を聞いて下さいませ。私は、まさに窮鳥の飛入るべきふところのないという状況で、父を亡くして6年、老いた母と若い妹を養うために、下谷で商いをしておりますが生活が楽になりません。浮世に望みもなく、自分のことはどうでもいいのですが、親のことを考えると、何とか相場をしてみたいのです。元手となるお金は一銭もありませんが、何とかご指導願えないでしょうか。」

 この時は4時間ほど話して帰宅します。

 久佐賀氏は、一葉のことを面白いと思ったのでしょう、後日、へたくそな歌をつけて亀戸天神の近くの梅屋敷に梅を見に行こうと一葉を誘います。

へたくそな歌とは

「とふ人やあるとこころにたのしみて そぞろうれしき秋の夕暮」

何で秋なの~?と思ったがつっこむのはやめておこう。

 一葉は、梅見に誘うなんて下心がみえみえ、彼の手中に入るわけにはいかないわ、と微笑んでこんな返事を書きます。

「貧者余裕なくして閑雅の天地に自然の趣をさぐるによしなく、御心はあまたたび拝しながら御供の列にくわわり難きをさる方に見ゆるし給へ、・・」

梅は見られないが、お気持ちに感謝して、とても上手な歌を返します。

「すみよしの松は誠か忘れ草 つむ人多きあはれうきよに」

 その後、一葉自身もよくも久佐賀氏にあんなことを頼んでみたものだと反省したようですが、6月になって、先方から手紙が来ます。

 歌道熱心なのに困苦している君のために何かをしてあげたいが、一回会っただけでそのようなことを頼む君の方も心苦しかろう。

「いでやその一身をここもとにゆだね給はらずや」

なるほど、妾になれと言われちゃったのですね。

 それに対し、一葉は返事を書きます。

私の今日までの詞、行いが大事なものであるとあなたが思うのであれば、援助をお願いします。私を女だと思ってあやしいこと(妾になれということ!)をお考えならお断りさせて頂きます。

 断られた久佐賀氏は、友達でいいから長くお付き合いしてと頼んだそうな。でもお金を援助してもらえたかどうかは不明・・・

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